いろいろな製品の原材料にはいっている「乳等を主要原料とする食品」。これは何なんだろうと思ったことはありませんか?
乳等を主要原料とする食品は簡単に説明すると、牛乳やチーズなどといった「乳」や「乳製品」の定義から外れたものです。
今回は乳等を主要原料とする食品について調べてわかったことを、できるだけ分かりやすく説明していきます。
Contents
乳等を主要原料とする食品とは何か考える
乳等を主要原料とする食品を考える上で欠かせないものがあります。それは「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」。この省令では、乳製品などの細かい決まりを定めています。
まず、省令によると、「乳等」とは「乳及び乳製品並びにこれらを主要原料とする食品」とされています。つまり、「乳等を主要原料とする食品」は「乳及び乳製品並びにこれらを主要原料とする食品を主要原料とする食品」となります。
長くなってしまいましたが、少し分かりやすくなってきましたね。
次に、乳及び乳製品とはどんなものなのか確認してみましょう。
「乳」とは何か
この省令において「乳」とは、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳及び加工乳をいう。
とあります。
牛乳や生乳などよく見るものもあれば、生めん羊乳など馴染みのないものもありますね。成分調整牛乳や加工乳など人の手を加えたものも「乳」にあたるんですね。
ちなみに、生めん羊乳は名前の通りヒツジの乳(めん羊=綿羊、綿=わた。ウールとか羊毛を作るため飼われている家畜)。
次に乳製品とは何か
この省令において「乳製品」とは、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、調製液状乳、発酵乳、乳酸菌飲料(無脂乳固形分三・〇%以上を含むものに限る。)及び乳飲料をいう。
乳製品は名前の通り、乳から作られた品物。ですので乳製品は、本格的に加工された物が多くなります。クリームやバター、チーズなど見慣れたものが多くありますね。
先程の省令では他にも乳や乳製品を示すだけでなく、牛乳やバターなど、個々の品物に対しある重要なものを定めています。
それは「品質」です。
大袈裟な話、「牛乳」に水を入れて薄めて「牛乳」を名乗ったり、植物油脂をバター風に加工し「バター」とすることは混乱を招くため許すわけにはいきません。
そのため、「乳」や「乳製品」は、それぞれ「どういった品物なのか」定義されていたり、「成分規格」が設定されていたりします。
具体的な規格をみてみる
例えば牛乳の場合、
「牛乳」とは、直接飲用に供する目的又はこれを原料とした食品の製造若しくは加工の用に供する目的で販売(不特定又は多数の者に対する販売以外の授与を含む。以下同じ。)する牛の乳をいう
成分規格
無脂乳固形分:8.5%以上
乳脂肪分:3.3%以上・・・(省略)。
と定義されています。
他にも、バターの場合は、
「バター」とは、生乳、牛乳又は特別牛乳から得られた脂肪粒を練圧したものをいう
成分規格
乳脂肪分:80.0%以上
水分:17.0%以下・・・(省略)。
と定義されています。
規格から外れるとどうなる?
ここで例えば、牛乳に手を加えて乳脂肪分を1%まで減らしたとします。牛乳は成分規格として乳脂肪分は3.3%以上でないといけませんでした。ですので、乳脂肪分が1%の品は規格外となり「牛乳」とは言えなくなります。ではこの場合、この品物は何に該当するのでしょう。
乳脂肪分を1%の場合「低脂肪牛乳」に該当します。
「低脂肪牛乳」の成分規格
無脂乳固形分:8.0%以上
乳脂肪分:0.5%以上 1.5%以下・・・(省略)。
注:簡単に表現するために成分規格等を一部省略しています。厳密にはもっと細かいです。
今度は、バターの乳脂肪分の60%を「食物性の脂肪」に置き換えたとしましょう。バターは、乳脂肪分が80%以上とされています。ですので、60%が食物油脂の品物は、乳脂肪は最大でも40%のため「バター」を名乗ることはできませんね。ですので「バター」以外の名を付けなくてはなりません。
先ほどの牛乳の例では、手を加えた後でも「乳」の「低脂肪牛乳」というものに該当しましたが、今回のバターの場合、「乳」にも「乳製品」にも該当するものがありません。
これが「乳等を主要原料とする食品」です。
乳等を主要原料とする食品 まとめると
まとめると、「乳」や「乳製品」を加工した品物で、「乳」、「乳製品」の定義に当てはまらないもの、規格が特に決められていないものが「乳等を主要原料とする食品」ということになります。「その他」的な意味が強いです。
また必ずしも「乳等を主要原料とする食品」と記載しなくてはならないわけではなく、一般的な名称があれば、それを記載することも可能です。例えば、チーズフォンデュソースやフルーツヨーグルトなど。
乳等を主要原料とする食品がどんなものなのか、なんとなく分かっていただけたでしょうか。次に、スーパーなどで売っている「乳等を主要原料とする食品」をみてみましょう。
「乳等を主要原料とする食品」の具体例をみてみる
具体例を見てみましょう。
スーパーなどを見渡すと、意外と「乳等を主要原料とする食品」はたくさんあります。
クリーム類似品
よく見るのがこの生クリーム関係。
この生クリーム関係の品物は、クリームかクリーム以外かで大きく2つに分けられます。
「生クリーム」とは「クリーム」のことを指しています。「クリーム」は最初に挙げた省令の「乳製品」にあたり、牛乳やチーズなどと同様に省令によって規格等が定義されています。
クリームは、
生乳、牛乳又は特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去したもの
成分規格:乳脂肪分18%以上・・・(省略)
とされていて、添加物等を加えるのは禁止されています。
つまり、安定剤や乳化剤などの添加物を加えたり、乳脂肪分を食物油脂に置き換えたものなどは「クリーム」とは呼べなくなります。この「クリーム」と呼べなくなったもの、つまりクリーム以外を「乳等を主要原料とする食品」と呼んでいます。ホイップ(泡立った)状態が長続きすることから、ホイップクリームとも呼ばれていますね。
また、クリーム以外の製品はさらに大きく、
①添加物を加えただけのもの
②乳脂肪分の一部を食物性脂肪に変えたもの
③乳脂肪分を完全に食物油脂に置き替えたもの
の3つに分類されます。
注意したいのは、クリーム以外の商品が生クリームより劣っているというわけではありません。それぞれ性質が異なり、料理によって使い分けることができます。
【参考】
生クリームとホイップクリームの違い、ご存知ですか?-cotta column
クリームとは?-meiji
バター類似の乳等を主要原料とする食品
明治チューブでバター1/3という商品。コンビニでも売っていて誰もがみたことのある商品かと思います。チューブタイプなので、バターナイフなどがいらず、パンに付けやすいので便利なんですよね。
こちらも「乳等を主要原料とする食品」とされています。この商品は、バター(ほぼ乳脂肪)1/3と、食物油脂2/3を混ぜ合わせたもの。
ここで発生するのが、チューブでバター1/3は、バターなのかマーガリンなのか、そもそも乳等を主要原料とする食品なのか問題。だれもが一度は議論をしたことがあるかと思います。
マーガリン類とバターの大きな違いは、マーガリン類は「油脂」を用いて作るのに対し、バターは「乳」を使って作る点です。出発物が違うんですね。
また、JAS規格によると、マーガリン類は、食用油脂が80%のものを「マーガリン」、食用油脂が80%以下で水分が多いのが「ファットスプレッド」とされています。よくマーガリンと思われている「コーンソフト」や「ネオソフト」は、正確には「ファットスプレッド」です。
チューブでバター1/3は、乳脂肪分が25.0%で植物性脂肪分が49.5%含んでいます。食物油脂がメインですよね。少なくともバターでもマーガリンでもありません。そう考えると、これもファットスプレッドなのでは?と思ってしまいます。実際「コーンソフト バター入り」などバターを加えたファットスプレッドも販売されています。
以下、私の考えになります。「乳等を主要原料とする食品」はいわゆるその他ですので、厳密な定義はあるません。製造者が、商品にとってバターが重要原料であると考えれば「乳等を主要原料とする食品」と名乗ることができると思います。
【参考】マーガリンの基礎知識-日本マーガリン工業会
脱脂粉乳類似品
森永の「Creap」は牛乳を原料に作られているため、乳等を主要原料とする食品となっています。一方、類似する商品、ネスレの「Brite」は食物性の油脂を使っており、クリーミーパウダーと称しています。
【参考】
https://www.creap.jp/museum/factory.html
https://d.nestle.jp/creamer/brite/
チーズ類似品
コレステロールOFFのチーズはスーパーのチーズコーナでよく見かけますね。
例えば、「コレステロール95%オフ ヘルシーシュレッド」。
こちらのチーズも乳等を主要原料とする食品です。
先ほど、クリームの乳脂肪分を食物油脂に置き替えたものを紹介しました。そしてこちらはチーズの乳脂肪分を食物油脂に置き替えたもの。
食物油脂はコレステロール含有量が低いため、動物性油脂と置き換えることでコレステロール含有量が低い商品ができあがります。
【参考】https://www.marinfood-onlineshop.com/SHOP/48690.html
原材料名にいる乳等を主要原料とする食品
食品のパッケージの裏の原材料名に「乳等を主要原料とする食品と記載」があった場合、上記のような食品が使われているということしかわかりません。
ですので「乳等を主要原料とする食品」と書かれても、具体的に何が入っているか、どんなものが入っているのか、消費者からは一切分かりません。牛乳を加工して作った品物でも、チーズを加工したものも、乳酸菌飲料を加工したものも「乳等を主要原料とする食品」と表現ができてしまいます。
個人的には、もう少し詳しく記載して欲しいと思っています。が、なかなか難しいでしょう。乳等を主要原料とする食品に代わる一般的な名称がない場合も多いはずです。そもそも原材料名に興味がある人は少数で、乳等を主要原料とする食品って何?と疑問に思う人も少ないはず。一般的には、アレルギー物質である「乳」が入っているかいないかが分かれば十分です。現状では、各自で想像するか、思い切ってメーカーに問い合わせをするしかありません。
乳等を主要原料とする食品は危険?
乳等を主要原料とする食品は危険なのか。私は特に危険ではないと考えています。
そもそも、乳等を主要原料とする食品は総称で、多くの食品を含みます。ですので一概に「危険」と判断することは困難です。
ただ、添加物等を含む可能性が高いため、取りたくない方は避けたほうが無難です。
【おまけ】「乳」っぽいけど「乳」ではないもの
乳糖:乳に多く入っているお砂糖。
乳化剤:普通は分離してしまう水と油を混ざりやすくするもの。
乳酸:腐った牛乳から見つかった酸
乳酸菌:乳酸を作る菌の総称
豆乳、カカオバターなど
注:乳糖は、牛乳を原料に作られているものがあります。乳化剤には、カゼインなど乳由来のものがあります。乳酸菌は乳ではありませんが、カルピスやヤクルト、ジョアなどの「乳酸菌飲料」の多くは「はっ酵乳(発酵乳)」という「乳製品」を使っています。牛乳アレルギーの方は注意が必要です。
【まとめ】
乳や乳製品には省令で定められた定義、規格がある。この定義から外れた食品が乳等を主要原料とする食品となる。乳等を主要原料とする食品という名称は必ず使わなくてはならないわけではなく、その食品を表す一般的な名称があれば、その名称を使っても良い。乳等を主要原料とする食品は、総称であるため、具体的な内容はわからない。原材料名に書いてあった場合、想像するしかない。
【参考】
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=78333000&dataType=0&pageNo=1